【徴収の現場 不況下の税金攻防戦】(上)隠し財産 暴きます(産経新聞)

 ■“特捜班”悪質滞納者と対峙

 東京都内の会社経営者宅。午前から始まった家宅捜索は、成果がないまま日没を迎えようとしていた。

 屋根裏、トイレ、ゴミ箱…。巨額の税金滞納による差し押さえで、隠し財産を発見できない東京国税局の徴収官たちには焦りの色がにじみ始めていた。数カ月にわたる内偵で納税できるだけの財産があるのは把握していた。それだけに安易な“白旗”は許されない。

 「財産を隠しても無駄です。見つけるまで絶対に帰りませんから」

 捜索に立ち会う経営者に覚悟を伝える徴収官。そのうち、応接室の棚の前を徴収官たちが通るたび、経営者が何度も視線を注ぐことに気づいた。棚の上には、手作りとみられる和紙製のトレー。直感が働いた。

 「この中を確認させてください」

 徴収官と経営者の間でしばらく押し問答があった後、ついに経営者は観念したかのようにトレーを無言で破り始めた。中から出てきたのはゼロがいくつも書き込まれた受取手形だったのである。

 「こんな所に…」

 捜索に長年携わり、さまざまな隠し財産の在りかを暴いてきた徴収官でさえ絶句するほどの瞬間だった。

                  ◆◇◆

 こうした悪質滞納者と対峙(たいじ)する専門チームが、東京国税局徴収部にある。

 通称「特捜班」。

 各税務署から引き継いだ滞納額約1億円以上の大型案件で、特に呼び出しや調査に応じないといった悪質事案が対象だ。隠蔽(いんぺい)財産の内偵や捜索、差し押さえなどを行う特別整理職員270人のうち、2チームに所属する計二十数人が担当。国税徴収の“最後の砦(とりで)”のような存在でもある。

 検察庁に悪質な脱税犯を告発する査察部(通称・マルサ)と同様、徴収部の捜索・差し押さえの現場もまた、壮絶だ。

 徴収官たちが調査対象者宅の正門から入ろうとすると、「不法侵入だ」と110番通報されたり、「差し押さえに来たら税務署に爆弾を仕掛ける」と電話で脅かされたりと、一筋縄ではいかないケースが少なくない。中には、差し押さえを逃れたいばかりに、徴収官の目の前で株券を破り捨てたケースもあったという。

 こうした特殊事案を扱う特捜班の活動がここ数年、多忙になっている。

 東京国税局によると、平成21年6月までの1年間で、特捜班による捜索は70回に達した。

 「企業の業績低迷で税金の滞納が増加する中、納税意識の希薄なケースも目立ち始めている」

 現場の徴収官たちからはこんなため息も漏れる。

 実際、20年度の全国の法人税や消費税など国税の新規滞納発生額は前年度比1・8%増の8988億円と3年ぶりに増加に転じた。それに伴い、国税局が意図的に財産の差し押さえを免れる滞納者を、国税徴収法違反(滞納処分免脱)の罪で検察に告発した件数も過去最多の5件に上り、悪質滞納者対策も急務となっている。

                  ◆◇◆

 ときに悪質滞納者たちから「税金泥棒」などと罵詈(ばり)雑言を浴びせられながらも、徴収の現場に立ち向かう心理とはどういうものなのか。ベテラン徴収官はこう話す。

 「滞納者のうち、本当に悪質なのは数%ぐらい。ただ、その数%を放置しておくと“逃げ得”を許すことになる。それは納税者の間に不平等感をもたらし、ひいては、国の申告納税制度の根幹をも揺るがす事態に発展しかねない」

 新規滞納額が増加した徴収現場にはそんな危機感があるというのだ。

 ただ、それでも悪質滞納者は後を絶たない。

 ある特捜班OBには、今でも苦い記憶がよみがえる。

 外資系企業の財産調査を行った際、やっとの思いで隠し財産を見つけたときのことだ。財産があった場所は、海外の金融機関の口座。国税徴収法の徴収権限の及ばない海外に送金していたのである。

 海外送金したケースの中には、徴収官が社長らを説得して送り戻させて納税にこぎつけたケースもある。国税徴収法違反を適用することもある。「ただ、海外財産に対しては、徴収権限が及ばず、手の打ちようがない」(特捜班OB)

 日米租税条約には徴収共助の規定もあるが、適用条件が限定的なため、差し押さえ逃れで行われたような不正な海外送金に同規定を適用することはできないという。徴収のグローバル化も課題となっているのだ。

                   ◇

 長引く景気低迷で税収が減少する中、悪質な差し押さえ逃れが問題化している。一方、低所得者層への差し押さえの是非をめぐる論議も熱を帯び始めている。国民生活を支える財源としての税金をめぐって何が起きているのか−。徴収する現場の実態を追った。(花房壮)

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